« 出張から帰宅 | メイン | Cinema Displayほすぃ »

July 24, 2004

バイオインフォマティクス夏の学校2004 in 輪島

二泊三日で輪島市で開催された「バイオインフォマティクス夏の学校」へ行ってきましたので、忘れないうちに報告。
主催者側の報告によれば、講師/事務局方を除いた参加者は全部で67名。その構成を見ると、学生さんやポスドクが30名、民間企業に勤める社会人さんが27名、その他、大学や研究機関などからの参加者が10名と、意外に社会人が多いのが特徴的だ。ちなみに、同部屋だった方々は、みんな製薬企業やITベンダーに勤める20代の社会人さんでした。

今年の講義内容は、主に実験系研究者による話と自然言語処理やオントロジーの話の2つがメイン。去年と比べると、わりとバランスのとれた構成だったかもしれない。

以下、講義の概要と感想をピックアップ。

★第1日目
伊藤隆司先生(東京大学)「定量的オーミックスと知識発見」
出芽酵母を使った全長cDNA解析で、転写開始点や新規転写単位を見つけたよという話。100a.a.以下の小さな遺伝子が、同じ転写単位内に存在する遺伝子の発現を制御しているらしい。それから、トランスクリプトームの話では、各mRNAの分子数から遺伝子発現の絶対量を求める「ATAC-PCR」のお話や、2ハイブリッド法、逆2ハイブリッド法、ポリユビキチン化蛋白質の網羅的解析など、解析手法の紹介。

五斗進先生(京都大学)「糖鎖構造データベースの構築と解析」
ゲノム配列データや発現データなどはハイスループットでデータが得られるが、それ以外の文献データでは地道に情報収集を行い、データーベースへ登録を行うしかない。この講義では、後者の例として糖鎖のデータベース(KEGG/GLYCAN)が紹介された。後半では、糖鎖マイクロアレイによって糖鎖・脂質関連遺伝子(Glycosyltransferaseなど)の発現解析を行い、上記の糖鎖データベースと組み合わせる事で、細胞で特異的に合成されている糖鎖を推定する方法のお話。

馬見塚拓先生(京都大学)「バイオインフォマティクスへの機械学習応用」
前半では機械学習の概要、後半ではその例として糖鎖のための確率モデルとマルチプル糖鎖アライメントのお話。

★第2日目
辻本豪三先生(京都大学)「トランスクリプトーム解析に基づくゲノム創薬」
1994年、米国内の調査によると約220万人が投薬の副作用によって入院し、そのうちの約10万人が死亡したと言うショッキングな話が紹介された。こうした副作用を減らすためには、薬の作用を解明し、個体差を考慮した創薬・投薬(テーラーメイド医薬)が必要とのころ。その他、オーファン受容体のリガンド探索やDNAチップを利用した発現パターン解析、KOマウスを利用した機能解析など、主に実験方面からのお話。

浦本直彦先生(日本IBM)「ライフサイエンス分野における知識発見と統合」
文献情報のテキストマイニングについて。自然言語処理によって構文解析までおこなってますよーというお話。

田中穂積先生(東京工業大学)「自然言語処理入門」
自然言語処理の入門的な講義・・・と要旨に書いてあるんだけど、門外漢には理解不能だったっす(^^;

建石由佳先生(CREST/JST・東京大学)「MEDLINEからの情報抽出と自然言語処理」
GENIAプロジェクトの概観について。自然言語処理で文献情報の品詞や構文、係り受けまで解析し、生物学情報を抽出しましたよー、という話。

有田正規先生(東京大学)「バイオインフォマティクスの泉―恐るべきムダ知識」
「ジュラシックパークの恐竜の塩基配列は、大腸菌のプラスミド配列だった」
「セレラ社で解析したヒトゲノムは、Craig Venterのゲノムだった」
「イヌゲノムは、Venterの愛犬のゲノムだった」
「京大化研のK久實は、『みんなのうた』で『おでんの歌』を歌っていた」
「慶応大のT田勝は、ご自身で作詞・作曲した『20回目の結婚記念日』というレコードを出していた」

★第3日目
高井貴子先生(東京大学)「生物学における“解釈”を探求する」
オントロジーの基本概念や、タキソノミーとオントロジーの違いについてなど。今まで、オントロジーについて、基礎的でまとまった話を目にする機会がなかったので、とても参考になりました。

久原哲先生(九州大学)「遺伝子発現データを基盤とする遺伝子発現ネットワーク構築」
主にアレイ解析のお話。ゲノムはようやくわかってきたけど、トランスクリプトームとかプロテオームとかメタボロームなんかは、まだまだデータが足りませんねとか、今までブラックボックスだった薬物のターゲット遺伝子と表現形の間の構造がわかれば、論理的な遺伝子ネットワークが推定した上での創薬が実現できますねとか、マイクロアレイのデータに存在するエラーの問題とか、RNAiを使ったマイクロアレイ解析などなど。

★感想
輪島の海は、とてもキレイでした。

20040724_thum.jpg

それから、朝市通りに近い「まつおか」という食堂で、ウニとイクラとイカがのった「ともえ丼」(1,500円)をいただきましたが、新鮮な海の幸がとっても美味しかったです。夜は同業他社さんと交流したりとか、楽しかったです。
ただ、会場まで遠かったので初日は朝5時起きだったし、夜は夜で遅くまで飲んだりしてたんで、正直、講義はキツかったですなぁ(^ー^;

投稿者 blog@tsukuba : July 24, 2004 11:36 AM

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://tetralog.in/mt/mt-tb.cgi/13

このリストは、次のエントリーを参照しています: バイオインフォマティクス夏の学校2004 in 輪島:

» バイオインフォマティクス夏の学校2004のまとめはこの方が from 薩摩兼士の日記とメモ
http://www.es.dis.titech.ac.jp/~satsuma/d/20040723.html#c01 バイオインフォマティクス夏の学校2004... [続きを読む]

トラックバック時刻: August 5, 2004 07:11 AM

コメント

あいかわらず、難しそうな…(*_*)
うーん、充実した暮らしなのだねえ。
ともえ丼…美味そうだ。
昨日、初めて、越前で有名な「白浜がんじゃ」ってやつをたべました。
ばふんウニの中でも、白浜でとれたうには最高で、
値が高いそうで、やおおありすっごく繊細な粒で、なんとも美味い!!
いままでで、一番おいしいうにだったよ〜(*^。^*)
輪島のともえ丼も美味そうだな〜( ̄¬ ̄)

投稿者 こんぶや : July 24, 2004 10:35 PM

この〜学校は、昔ゲノム特定(重点)班会議と合わせてやっていた「ゲノム情報チュートリアル」のノリですねぇ。そこで知りあった(一緒に飲んだ)仲間は今でも私の知りあいネットワークのコアをなしております。もちろん、会社的には外部「研修」的な意味合いが強いのでしょけど、どうかそのつながりを今後とも大事に。

投稿者 hub : July 24, 2004 11:52 PM

>こんぶや様
日本海の海の幸は最高っすね!大好きになっちゃいました。「白浜がんじゃ」どんな味なんだろー?食べて見たいなぁ(ジュルリ

>hub様
色々な人とのつながりができた事が、今回の一番の収穫だったかっもしれません。
そーいえば、アリータ氏による「日本のBI史」の概説で、「次世代のNEW HOPEたち」の中の一人にhub師匠も入ってましたよ(笑

投稿者 tetra : July 25, 2004 01:09 AM

関連する書籍