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March 21, 2005

安全と安心の科学

安全と安心の科学
村上 陽一郎
集英社 2005-01


by G-Tools

先日、東武伊勢崎線の手動式踏切において、列車が近づきつつあるのに保安係員が遮断機を上げてしまい、4名が死傷するという、大変痛ましい事故があった。確かに、件の保安係員には重大な過失があったよう。しかし、ともすると、こうした事故は当事者の責任の追求だけで終わってしまい、なぜそのような事故が生じてしまったのかという部分の解明が、なおざりにされてしまうことが多い。よくよく、事故の原因を究明し、再発防止策を立ててもらいたい。

ところで、「安全文化」は、主に航空機業界や原子力業界など、事故の際のリスクの大きな産業で研育まれてきた。その中でも、とりわけ重要なのが「フール・プルーフ」と「フェイル・セーフ」という2つの概念である。

「フール・プルーフ」とは、「人間は誰でも間違える」という前提のもとに、「もし人間が操作ミスなどのエラーをおこしても安全が保てるようなシステム」を設計するという考え方だ。この「誰でも」には、経験豊富なベテランも含まれる点に注意されたい。(彼らも人間である以上、間違えをおかすものだ)

もう一方の「フェイル・セーフ」は、「誤作動や故障が発生しても安全が保たれるようなシステム」のこと。機械はいつかかならず壊れるものだ。しかし、ジャンボ機ではエンジンの1つが故障で完全停止したとしても、安全に飛行を続けられるように冗長性を持たせた設計がなされている。

報道によれば、件の手動式踏切では、接近中の列車が表示板にランプで示される上に、電車が接近中はロックがかかり踏切が上がらないような二重の安全対策がなされていたようだ。しかし、現場の保安係員の手によってロックが外されていたため、この安全対策はうまく働かなかったと見られる。

この本の筆者は「安全は達成された瞬間から、安全の崩壊が始まる」と警告している。まさに「一度達成された安全の崩壊」の結果が、この重大な事故だったのかもしれない。

投稿者 blog@tsukuba : March 21, 2005 06:07 PM

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