tetraの外部記憶箱

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2008-03-06

_ [photo][K100D][SIGMA 10-20mm] 超広角レンズで巡るイタリア

昨年末に、新婚旅行でイタリアへ行ってきた。ミラノから入国し、6日間でベネツィア、フィレンツェ、ローマと、主要4都市を巡るツアー旅行だ。本格的な海外旅行は、二人とも初めて。ここは、ぜひとも沢山の写真を撮ってきたい!と、嫁さんを説得して購入したレンズがコレ。

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φ77mmと大口径なため、コンパクトなボディのK100Dに装着すると下の写真のように不恰好になってしまうが、左手でレンズを支えて撮影すれば、それほどバランスは悪く無い。ただ、結構ズッシリと重く、旅行で持ち歩くには正直しんどかった。

しかし、この画角は全く異次元の世界。標準的なデジカメでは、離れないと入りきらないであろうコロッセオも、かなり近くに寄っても撮影可能なのだ。今回の旅行のように、美しい建物の多いイタリアでは大活躍のレンズだった。ちなみに、ちょうどローマを訪れた日は12月25日、つまりクリスマスだ。ツリーとコロッセオの組み合わせなんて、この時期にしか見られない風景だろう。

下はパンテオンの外見とその内部。これ、なんと三脚を使わずにフリーハンドで撮影しとります。三脚を持ち歩くのが難しい海外旅行では、K100Dの低ノイズ&手ブレ補正機能の威力は抜群だ。

超広角レンズは、画面の端に行くほど引き伸ばされる特性がある。撮影時にその特性を意識するれば、上のようにぐっと遠近感の増したダイナミックな構図が得られるようだ。これは、ハマりますねぇ〜。

下の3枚は、水の都・ベネツィアにて撮影。旅行中はフィレンツェ以外、ずっと天候に恵まれて青空がひろがっていたのが、惜しむらくはCCD上に結構目立つダストがのっていた事・・・(ToT)。

アップロード制限があるため一気には無理ですが、ぼちぼちfotologuの方へも写真をアップしていきます。


2008-03-09

_ [mac] intel Mac mini (Core 2 Duo)の11n化実験

光化にともない、プロバイダ⇔自宅間の通信スピードは飛躍的に向上した。しかしながら、IEEE 802.11gである家庭内無線LANがボトルネックになってしまい、あまり光のメリットが得られていなかった。そこで、家庭内無線LANの11n化を試みた。

ところが、今やiMacもMacBookも、そしてApple TVでさえも、高速無線LAN通信が可能なIEEE 802.11nへと移行したのに、Mac miniだけは未だにIEEE 802.11gに取り残されたまま・・・はて、いつアップデートされるのやら・・・。

てなわけで、自分でMac mniを11n化できないだろーかとアレコレ調べてみたら、intelベースのMac miniや古いMacBookを11化できるmini-PCIeカードがありました!

ソネット社 Aria extreme n:802.11nドラフト ワイヤレスカード

 

早速、秋葉原の秋葉館でAirMac Extremeベースステーションとともに購入して、自分で交換をしてみた。

以下、簡単な換装手順をメモしときます。(詳しい手順は、同梱の手順書を熟読の事)

 

箱の中には、mini-PCIe規格の無線LANカード、専用ツール(ヘラ、ねじ回し等)、写真つきの詳細な手順書(英語のみ)、MacBook用のネジ分類シート、小さなネジ2本が同梱されていた。

 

まずはマシンのコネクタを全て引き抜き、手順書にしたがい、付属のヘラで開腹。

 

スロットドライブ側から見て右上にある無線LANのアンテナユニットを取り外す。(プラスチックのツメで固定されている)

 

正面側のファンコネクタを、ゆっくり引き抜く。

 

ドライブユニットを固定している四隅のネジをはずす。(右下のネジだけ長い事に注意)

ドライブユニットとマザーボードをつなげているフラットケーブルに気を付けながらドライブユニットを持ち上げると、マザーボードの左上の方に、銀色のカバーの付いたカードが見える。これが、Mac miniの内臓無線LANカードだ。

 

無線LANカードとアンテナユニットとをつなげているケーブルのコネクタを引き抜く。(付属のツールを使うと便利)

カードをマザーボードへ固定しているネジを抜き、カードを引き抜く。

プラスチックの“足”を古いカードから新しいカードへ付け替え、カードを装着。

ネジで固定して、アンテナ線のコネクタを差し込む。

 

後は、開腹時とあは逆の手順で組み立て、コネクタの結線を忘れていないか確認して閉腹。

以上、作業時間はおよそ30分くらいだった。

 

AirMac Extremeベースステーションを設置。思ったよりコンパクトだね、コレ。

 

マシンを起動。アプリケーション→ユーティリティからAirMac管理ユーティリティを立ち上げ、パスワード等を設定。簡単、簡単!

AirMacの付属CD-ROMには、Windows用の管理ツールも入っているので、Windows使いはそっちを使ったほうが便利だろう。

 

以下、11n化前後のベンチーマーク

 

11n化前(11g)

1.NTTPC(WebARENA)1: 5955.016kbps(5.955Mbps) 744.21kB/sec
2.NTTPC(WebARENA)2: 5451.809kbps(5.451Mbps) 681.39kB/sec
推定転送速度: 5955.016kbps(5.955Mbps) 744.21kB/sec

11n化後

1.NTTPC(WebARENA)1: 13573.127kbps(13.573Mbps) 1696.46kB/sec
2.NTTPC(WebARENA)2: 15690.222kbps(15.69Mbps) 1960.95kB/sec
推定転送速度: 15690.222kbps(15.69Mbps) 1960.95kB/sec

おぉ〜、約3倍の速度アップだー!体感速度も上々、もっと早く移行しておけばよかったかも。

Windows用のドライバーも配布されているみたいなんで、BootCamp上のWindowsでも使えそうだ。

 

アップル AirMac Extremeベースステーション MB053J/A

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2008-03-10

_ [mac] iMac&Mac mini、近々アップデートか?

45nmプロセスで製造されたIntel Penrynチップ搭載のiMacとMac miniが、数週間以内に、発表されるらしいという噂が流れてきました。

Penryn iMac and Mac mini a few weeks away?

グラフィックチップも、MacBook同様、Intel GMA 950からGMA X3100へリプレースされる見通し。きっと、最大メモリも4GBまで、内臓無線LANもIEEE 802.11n対応になりそう。研究室用に・・・と計画していたが、もう少し待ってみよう。

CPUのクロックが、どのくらいまでアップされるのか期待。3GHzくらいまでアップしてくれたら嬉しいのだけれど。


2008-03-15

_ [photo][mac] iPhotoで新婚旅行アルバムを作ってみた

Macを買うと、もれなく付いてくる写真管理ソフト「iPhoto」には、実はアルバム作製機能があり、オンラインでプリントを依頼して配達してくれるサービスが受けられる。そこで、今回、結婚式で式場からもらった写真データと、新婚旅行のイタリアで僕が撮りまくってきた写真をiPhotoでアルバムにして、Appleに注文してみた。

作成方法は、至って簡単。あらかじめレイアウトが決まっているので、そこへ写真を落としてゆくだけだ。

最初、新婚旅行アルバムは写真がメインなので、コメントはできるだけシンプルに・・・と思っていたのだが、嫁さんから「もっとコメントをしっかり入れてよ!」という要望が出たので、「じゃぁ、自分でやってよ」という事になり、2人の合作となった。(結婚式アルバムは、すべて嫁さんが作った)

フォトアルバムの印刷・製本はアメリカで行っているらしく、新婚旅行アルバムは、今日、国際郵便で届いた。

写真の画質は、ちょっと甘い感じであり、紙質もややペラペラな感じではあるが、まぁ細かい事を気にしなければ満足できるレベルだ。何よりも、世界に一冊しか無いという所がすばらい。今後、毎年、その年に撮影した写真をアルバムにしてもらいたいかも、と思っていたり。


2008-03-18

_ [life] 結婚の経済合理性

恋愛は、合理性では説明のつかない不可解な事象である。嫁さんは、時々僕を「好きであることの理由」を、あれこれと列挙したりする。僕も嫁さんを「好きであることの理由」を考えては見たものの、どう考えても「後付けの理由」しか思い浮かばなかった。そもそも、「好き」であることに理由付けなんて必要ないのかもしれない。仮に「好きな理由」があったとして、その「好きな理由」が無くなったら彼女のことを嫌いになるかと問われれば「否」である。そもそも、恋愛なんて非合理な事象なのだから、「好きだから好き」でいいんじゃないかと思う。

 

しかしながら、結婚ともなると、一時の恋愛とは違って長期にわたって人生に影響を及ぼすイベントであり、ある程度の経済合理性を考慮に入れるべきである。経済的な豊かさと人生の充足感は必ずしも一致しないけれど、経済的なリスクを少しでも低減してゆく努力は、この将来が見えにくい時勢においては極めて重要であると、僕は思うのだ。

 

そこで、「結婚」、とりわけウチのような「共働き」家庭の経済合理性について考えてみたのだが、結婚して夫婦共働きをするという行為は、収入口が複数存在する非常に有効な「リスクヘッジ」の手段であるという結論に至った。

「リスクヘッジ」とは経済用語であり、「リスクを回避したり、低減する」という意味を持つ。もしもの時に備える「保険」を考えていただけると、わかりやすいかと思う。

 

具体例をあげつつ、解説しよう。

 

30歳も過ぎれば、少しずつ「健康悪化のリスク」も上昇する。もし独り暮らし、もしくは結婚をしていても片働きだった場合、入院ともなれば収入が完全に途絶えてしまうことになる。もちろん、そのために医療保険が存在するが、そのコストはバカにならない。また、この不安なご時世、勤め先の会社の経営不振による「解雇リスク」も存在する。また、個人的な理由によって転職を行う際にも、一時的な「収入減リスク」を覚悟しなければならない。

しかし、共働きであれば、例え上記に上げたようなリスクが発生して一方の収入口が途絶えても、他方の収入でカバーできるので、収入が完全にゼロになってしまう事態だけは避けることが出来る。これが、共働きをリスクヘッジとする考え方だ。もちろん、平常時においては、片働きよりも収入増が見込まる事は言うまでもない。

この「リスクヘッジ」の考え方に基づいて「結婚戦略」をとるとすれば、男女ともに「稼げる相手」を探すことだ。

実際、昔から女性は高収入な男性を結婚相手として選ぶ傾向はあったが、逆に高学歴・高収入な男性の方も、稼げる女性を結婚相手に選ぶ傾向があり、これが格差固定にもつながっているという説もあるとの事。

 

ここから、男女がそれぞれ取るべき恋愛および結婚の戦略は、次のようになるかと思う。

 

女性・・・仕事のスキルを積み、「稼げる女性」を目指す。そして、「稼げる男性」をゲットする。

男性・・・「稼げる女性」と結婚する。もちろん、共働き家庭をささえるために「家事のスキル」も身に付ける。

 

まぁ、こう合理的に推し進めてしまうと、余りに味気ないとは思うのだけれど・・・

 

また、政策レベルでは、共働きのしやすい労働環境を整えてゆくことが、少子化対策にも有効である事も付け加えておく。とりわけ女性は、出産・育児のため、一時的に休職または労働時間の短縮をしなければならない。そうした状況になっても、働いて行けるような社会環境を醸成する必要がある。ましてや日本の労働者人口は、今後、減少の傾向にあるのだから、働き盛りの女性にもっと働いてもらわないといけない。

_ [memo] ローマの風刺詩人、マルティアリスの「エピグランマ」より

人生を愉しむのは明日からにしよう、だって?
それでは遅すぎる。愉しむのは今日からであるべきだ。
いや、より賢明な生き方は、昨日からすでに人生を愉しんでいる人の生き方ですよ。

2008-03-19

_ [china] 北京オリンピックはボイコットすべし!

久々に、アジってみる。

「平和の祭典」が行われる予定の中国にて、凶悪な人権弾圧が行われている。言うまでもない、チベット自治区でのデモへの武力弾圧の件だ。

チベット問題は、中国は一貫して「国内問題である」としているが、チベットはもともと独立国であり、1950年に中国軍が武力で侵略して以来、チベット人の抵抗運動と中国政府による虐殺が、繰り返し行われてきた経緯がある。また、あまり一般には知られていないことだが、中国政府はダフール市民に弾圧を行っているスーダン政府を支持して武器の供与等の便宜を図っており、間接的にスーダンの圧政に関与しているのだ。

すでにフランスのクシュネル外相はEU各国に対し、北京オリンピック開会式のボイコットを呼びかけた。今のところ、北京オリンピックによる利益のソロバン勘定をしている財界と中国の顔色をうかがってばかりの福田政権では、日本としてのボイコットは難しいかもしれないが、市民が声を上げる事で、少しでも中国の蛮行に圧力を加えることも可能かと思っている。


2008-03-20

_ [books] アレゲな人の必読書10冊

必読書リストが流行っているっぽいので、僕がこれまでに影響を受けた本を10冊だけセレクトし、リストアップしてみた。本当は、もっと取り上げたいのだけれど。

 

ガロアの生涯―神々の愛でし人 レオポルト インフェルト、市井 三郎
4535782369

群論など、純粋数学に大きな功績を残した天才数学者、エヴァリスト・ガロアの伝記。彼の理論は非常に先駆的な内容であったのだが、論文を託されたコーシーが論文を紛失してしまったり、論文を預かったフーリエが急死したりなど不運が重なり、生きている間に理解されることは無かった。そして、強烈な共和主義者だったガロアは、ますます政治活動を活発化させ、ついには21歳の若さで決闘で命を落としてしまう。ピュアで鮮烈な一生は、儚く切ない。

 

努力は報われず正義は滅びる―レゲエ数学者の人生談義【絶版】 秋山 仁
4810371999

「努力は報われず、正義は滅びる」・・・一見するとペシミスティックなメッセージと受け取られかねないが、この言葉には「されど挑戦の日々」という言葉が続く。努力すれば必ず報われるほど現実派甘くない。それでも、「報われないかもしれない努力を続け、まかり通らない正義を貫き続けよ、それこそが若者だ!」という、力強いメッセージにあふれた本だ。僕が通っていた予備校の夏期講習に秋山仁先生の講演会があり、そこでこの本を購入した。(もちろん、サイン入り!)その後も、ネガティブな気分に陥りそうになった時には、繰り返し本書を読んで勇気付けられたものだ。残念ながら絶版となってしまったみたいだけれど、十代の若い人に是非読んでもらいたい一冊である。

 

生命科学 中村 桂子
4061592319

物理工学科もしくは情報工学科志望だった僕が、生命工学志望へと進路を転換するきっかけを作ってくれた一冊。この本が書かれたのは1975年という事で、内容に関しては既に古くなってしまっている部分が多いが、高校で生物の授業を取っていなかった事もあり、生物の分子レベルでの精巧な仕組みをこの本で初めて知り、感嘆した覚えがある。分子生物学史から生命倫理・環境問題など、人文・社会科学を含めた“生命科学”全体の俯瞰が得られる点では、今でも有用じゃないかと思う。

 

博士号とる?とらない?徹底大検証!―あなたが選ぶバイオ研究人生 白楽ロックビル
4897066492

大学へ入学した当初、そのまま大学院へ進学するかどうか、また、進学するにしても修士卒で民間企業へ就職するのか、はたまた博士課程まですすんでアカデミックな世界へと足を踏み入れるのか、進路についてアレコレ悩んでいた僕に指針を与えてくれた一冊。客観的かつ豊富なデータに基づき、大学卒業後の進路について、詳細に分析がなされている。ちなみに、僕の家はとても貧乏であり(笑)、これ以上、親に経済的な負担はかけたくなかったので、博士課程への進学は断念せざるを得なかったが、一方で研究者になりたいという子供の頃からの夢も諦め切れなかった。本書を読んで熟慮した結果、僕の出した結論は、大学院へ飛び級して1年分の学費を浮かした上で修士で卒業し、民間企業の研究職になるという進路だった。おかげで、僕は「漂流博士」にならずに済んだワケですよ(笑)

 

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書) 本川 達雄
4121010876

東工大の本川達雄先生の著書。「サイズの生物学」についてかかれた本で、学生時代に読んだ。きちんとした科学的根拠があるわけではないのだろうけれど、全ての動物は一緒の内の心拍数は同じで、大きな生物ほど心拍数が遅くて長生きし、小さな生物は心拍数が早くて寿命が短いという面白い仮説が紹介されている。全ての生物は、同じ設計思想によって出来ているんだなぁ、という感想を持った。著者の本川先生は、自称“歌う生物学者”としても有名であり、アレゲ的にもとても面白い学者だ。

 

カール・セーガン 科学と悪霊を語る カール セーガン、青木 薫
4105192035

天文学者として有名なカール・セーガン博士が、UFOや超能力など、いわゆる疑似科学を、科学的な視点からバッタバッタとなぎ倒す好著(笑)

 

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫) リチャード P. ファインマン、大貫 昌子
4006030053

天才物理学者、リチャード・ファインマンの自叙伝。破天荒でイタズラ好き、好奇心の赴くまま、人生をとことん楽しむという姿勢が、とても面白い。ちなみに、ファインマン先生が、最期に口にした言葉は、「2度死ぬなんて、まっぴらだよ。全くつまんないからね(I'd hate to die twice. It's so boring.)」だったそうだ。

 

マリス博士の奇想天外な人生 キャリー マリス、福岡 伸一
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PCR法の発明によってノーベル賞を受賞したキャリー・マリス博士の自叙伝・・・と言うより、武勇伝(笑)破天荒ぶりは、ファインマン博士と相通ずるところあり。

 

二重らせん (講談社文庫) ジェームス・D・ワトソン、中村 桂子、江上 不二夫
406183715X

言わずと知れた、DNAの二重螺旋モデルを発見してノーベル賞を受賞したワトソン博士の名著。発見に至るまでの過程が、ドラマチックに描かれている。まぁ、例によってロザリンド・フランクリンの扱いは酷いですが(笑)

 

理系白書 毎日新聞科学環境部
4062117118

日本の経済発展を支える理系の冷遇っぷりについて、実際のデータに基づいて分析する。涙無しには読めませぬぅ〜!


2008-03-22

_ [books] ゲイリー・P・ピサノ「サイエンス・ビジネスの挑戦」

サイエンス・ビジネスの挑戦 バイオ産業の失敗の本質を検証する
ゲイリー・P・ピサノ 池村 千秋

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star“バイオテクノロジー神話”の検証?
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本書は、ハーバード・ビジネススクールの教授であるゲイリー・P・ピサノ氏が、バイオ産業の挫折とその原因を、客観的に分析したものである。

この30年間、バイオの世界では遺伝子クローニング、PCRの発明、ヒトゲノム解析、システム生物学、プロテオミクスと、数々の革新的なイノベーションが誕生した。そして、新しいサイエンスの誕生に伴い、新たなバイオベンチャーが生まれ、そして多額の投資が注入されてきた。

では、実際に新しいテクノロジーから新たな製品(主に医薬品)が生まれて、ちゃんとビジネスとして回っているのだろうか?

・・・まぁ、この業界に身を置いている者ならば、なんとなくわかるだろうが、これが全くもって散々な状況なのだ。


全米のバイオテクノロジー産業全体を集計すると、この30年間、収益は倍々ゲームで増えているが、利益はほぼ横ばい・・・と言うか、限りなくゼロに近い。
そして、数少ない成功例であるアムジェンの利益を除くと、バイオテクノロジー産業はほぼ終始一貫して「赤字」を垂れ流し続けているのだ。

 

その原因として、ピサノ教授はこの産業の特異性を2つあげている。
一つは、「不確実性」が深刻であること、もう一つは、「すり合わせ型」であるという事である。

 

まず、前者について。
製薬における研究開発につぎ込まれる資源の大半は、“失敗作”のために費やされている。最終的に承認を得られる化合物は6000分の1とも言われ、臨床開発のフェーズIを開始しても、フェーズIIに進めない可能性は60%もある。さらに、フェーズIIに進んだとしてもフェーズIIIに進める可能性は50%であり、フェーズIIIに進んでも失敗に終わる可能性は50%にも及ぶ。
したがって、研究開発におけるリスク管理が、非常に重要となる。

 

次に、後者の「すり合わせ型」であるという点について。
IT産業は、比較的、ベンチャーが成功している分野だが、これは、「モジュール化が容易であったから」である。
例えば、パソコンの部品だが、キーボード、モニター、メモリなど、それぞれ仕様があらかじめ決まっており、その仕様にそって独立に設計する事が出来る。
ところが医薬品開発は、「モジュール型」ではなく「インテグラル型」の性格が強い。
人体の仕組みは、生体分子と化学物質の相互関係が複雑に入り組んでおり、問題の一つの側面だけ見ていたり、一つ一つの側面をばらばらに見ていたりしては、問題を解決できない。色々な可能性を検証するためには、さまざまなジャンルの科学者の知識が必要であり、個々の技術および科学的知識相互のすり合わせが必要となる。

 

新しい技術の誕生により、これらのリスクが低減して、次々に新しい治療薬が誕生する・・・などという「夢物語」が語られて久しいが、実際には、測定法やデータの増加がもたらしたものは、複雑性と不確実性の増加であったらしい。

 

それでは、この分野のビジネスモデルとしては、どのようなケースが考えられるだろうか?

ピサノ教授は、バイオ産業において考えられるビジネスモデルを2種類に分類している。一つは、基礎科学の色彩の強い初期の研究をベンチャーが行い、ライセンシングにより大手製薬企業が開発を行うモデル、そして、もう一つは、臨床開発やマーケティングなどの下流まで含めて、すべてをメーカーが行う「垂直統合」モデルだ。通常、画期的な技術については、前者の方法がとられるケースが多いが、実際には、情報の非対称性、専門性、暗黙知の存在、知的財産権保護の不確実性などによるトラブルが多く、画期性の高いプロジェクトほど、後者の「垂直統合」モデルが適しているという指摘は興味深い。

 

しかし、結局のところ、ケース・バイ・ケースでビジネスモデルを使い分けるより他無く、「これだ!」という王道は、今のところ存在しないというのが結論だ。

(まぁ、だからこそこの分野の新規参入障壁が高く、薬価にはリスクプレミアムが加算され、高い利益率が確保できているのだろうけどね)

 

最後に、「トランスレーショナル・リサーチ」について。

大学や公的研究所など、アカデミックの段階で画期的なテクノロジーが発見されても、多くの場合、あまりに基礎的過ぎるため、ベンチャーキャピタルからも資金調達が困難であり、なかなか実用化や既存企業へのライセンス供与などへ至らないケースが多い。トランスレーショナル・リサーチとは、その名の通り、基礎科学の発見を具体的な商品化の機会に「翻訳」する取り組みのこと、つまり、基礎研究と実用化の橋渡しを支援する活動のことだ。

 

アプローチとしては、政府による支援と民間による資金供給が考えられる。

後者の一例として挙げられているのが、「ベンチャー・フィランスロピー」の試みだ。これは、非営利の慈善団体の要素と、営利のベンチャーキャピタルの要素を組み合わせた組織のこと。第三世界のエイズや感染症の研究を支援する「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」や、パーキンソン病の研究を支援する「マイケル・J・フォックス財団」などが、それだ。ただ単に資金を提供するだけではなく、ベンチャーキャピタルのように資金提供にマイルストーンを設けたり、マネジメントの指導や、他の組織とのコラボレーション等にも積極的に口をはさむ。そして、投資からのリターンは、新たな研究助成金の拠出に使われる。

 

また、上場企業の場合、投資家からは目先の利益を求められるが、開発サイクルが平均12年というバイオテクノロジー産業のようにサイエンスに基礎を置くビジネスのニーズにはあまり適合しておらず、ロシュが大株主のジェネンテックのように、「準公開企業モデル」も、可能性の一つとして考えられるとしているが、まぁ、今のところ最適なマネジメントのモデルは存在しないという所だろうか。

 

それから、大手製薬企業同士のM&Aが相次いでいるが、ピサノ教授は「不可解」と切って捨てる。たとえ、M&Aによって余剰な工場、MR人員、重複している研究開発活動を整理できたとしても、成長性が上がるわけではない。それに、会社規模が2倍になれば、売り上げや利益も2倍に増やさなければならないが、研究開発の規模を拡大したからといって、新薬開発の生産性が向上するという根拠は、ほとんどない。まぁ、研究開発の不確実性が高い以上、もっともな指摘だ。

 

う〜む、ベンチャー大国の米国でもこの惨状だからなぁ〜、日本のバイオベンチャーはどんなもんでしょ・・・・。


2008-03-23

_ [books] 橘玲「マネーロンダリング入門」

マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで (幻冬舎新書)
橘 玲

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starマネーロンダリングとは、情報、法制度、主権との戦いである
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「事実は小説よりも奇なり」と言うが、犯罪で得た収益やテロ資金などを海外の複数の禁輸機関を使って隠匿する「マネーロンダリング(資金洗浄)」の事例と仕組みを解説した本書は、非常に面白い。著者は、読者にマネーロンダリングを薦めるのではなく、かと言って「主義主張」や「道徳」を大上段に構えるわけでもなく、今、現実に進行している金融のグローバル化を「マネーロンダリング」という一面からクールに切り取って見せる。

経済のグローバル化により、今や、日本に居ながらにして海外にオフショア法人を設立したり、海外の銀行に口座を持つことが出来る。しかしながら、国家は旧来どおり国の主権の及ぶ範囲しか支配できず、徴税を課すことも出来ない。行き着く先は、税金や公的サービスにより、個人が国籍を選ぶ時代なのかもしれない。

経済学的には、税金とは国家から様々な保護や便益を受けるための代償であり、たまたま自分が生まれたというだけの理由で特定の国に、生涯税金を払い続けることに合理的な理由はない。それぞれの人生設計において、自分が税金を払う国を自由に決めて良いはずだ。
経済のグローバル化のなかでマネーが国境を越えて移動し、次いで企業が多国籍化した。そしていま、個人の国籍離脱が始まっている。個人の「多国籍化」「無国籍化」こそが、グローバル資本主義の終着点なのだ。

本書を読んでいて、「国境の意味って何だろう?」という気になってきた。


2008-03-29

_ [photo][K100D][TAMRON SP AF90mm] 都内の桜は本日満開

大井町から小菅へ引っ越して、はや1年が経ようとしている。この一年間は、結婚式の準備に追われたり、その戦後処理に追われたりと、なかなか多忙であった。ようやく、一年経って落ち着いたという感じだろうか。

大井町に住んでいた時分は、自宅の目の前に大きな桜の古木があり、ベランダから花見ができたのだが、今、住んでいるところでは、近所の公園に桜の木が数本、植わっている程度である。そこで、花粉症の治療で通っている耳鼻科へ行った帰りに、浅草まで足を伸ばしてみる事にした。

地下鉄の駅で下車し、地上へ出ると、僕は人の波に飲み込まれた。ごちゃごちゃとした都会の雑踏を抜け、隅田川の河畔へとたどり着いてみると、そこにはぽっかりと青空が広がり、淡いピンク色の霞がかかったような景色が飛び込んできた。

春は、出会いの季節であるとともに、別れの季節でもある。別れと言えば、会社の後輩の一人が会社を辞めて、大学の博士課程に入り直すという。

まぁ、僕も学位に未練が無いと言えば嘘になるが、さすがに今の安定した生活をかなぐり捨てて、大学へ戻る事は出来ないなぁ。独身ならともかく、もう家庭を持ってしまったし。

それに、今はビジネスやマネジメントの世界も面白いかもしれないと思い始めている。

帰りは、東武線の浅草駅から乗車。明日は、母の還暦を祝いに群馬へ日帰り帰省だ。上州の桜は、きっとこれからだろう。