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2008-03-23

_ [books] 橘玲「マネーロンダリング入門」

マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで (幻冬舎新書)
橘 玲

マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで (幻冬舎新書)
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starマネーロンダリングとは、情報、法制度、主権との戦いである
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「事実は小説よりも奇なり」と言うが、犯罪で得た収益やテロ資金などを海外の複数の禁輸機関を使って隠匿する「マネーロンダリング(資金洗浄)」の事例と仕組みを解説した本書は、非常に面白い。著者は、読者にマネーロンダリングを薦めるのではなく、かと言って「主義主張」や「道徳」を大上段に構えるわけでもなく、今、現実に進行している金融のグローバル化を「マネーロンダリング」という一面からクールに切り取って見せる。

経済のグローバル化により、今や、日本に居ながらにして海外にオフショア法人を設立したり、海外の銀行に口座を持つことが出来る。しかしながら、国家は旧来どおり国の主権の及ぶ範囲しか支配できず、徴税を課すことも出来ない。行き着く先は、税金や公的サービスにより、個人が国籍を選ぶ時代なのかもしれない。

経済学的には、税金とは国家から様々な保護や便益を受けるための代償であり、たまたま自分が生まれたというだけの理由で特定の国に、生涯税金を払い続けることに合理的な理由はない。それぞれの人生設計において、自分が税金を払う国を自由に決めて良いはずだ。
経済のグローバル化のなかでマネーが国境を越えて移動し、次いで企業が多国籍化した。そしていま、個人の国籍離脱が始まっている。個人の「多国籍化」「無国籍化」こそが、グローバル資本主義の終着点なのだ。

本書を読んでいて、「国境の意味って何だろう?」という気になってきた。